放課後の音楽室 その2

 こんにちは、あやはなです。


というわけで今年も谷山ぴろこさんの、
「放課後の音楽室」を観に上野の文化会館へ行って来ました。
なぜか他の会場は当たりませんが、こちらは昨年も当たりました。




谷山ぴろこさん。
幅広い才能を持つ異能のアーティストですが、
自分にとってはかなり特別なアーティストでもあります。


話すと長いですが、初めて谷山さんの曲に出会ったのは中学生の時です。
その前から谷山さんの曲だと知らずに色々と聴いてはいましたが。


ある晴れた朝の登校中にふと、
「こんなに良い天気の気持ちの良い日なのに学校に行くなんてもったいない」
そう思ってサボろうと決め家に戻りました。
家に戻り着替えてラジオを持って自転車に乗りました。
と言っても繁華街へ出かけた訳ではなく、近所の河原に行ったんですが、
誰もいない土手に寝転がって、何となく川を見ながらラジオを聴いていました。
適当に流れていた番組を聴いていました。


平日の午前中だったから、確か大沢悠里の悠々わいどかなんかだったと思いますが、
鶴光のゴールデンアワーではなかったです。三宅裕司のヤングパラダイスでもなくて、
吉田照美のてるてるワイドでもなく、高田文夫のビバリー昼ズでもなく、
仲村トオル待たせてゴメンでもなく、おニャン子の危ない夜だよでもなく、
シリアポールのサウンドマーケットでもなく、ピストン西沢のグルーブラインでもなく、
高見恭子のアフタヌーンブリーズでもなかったですね。
長山洋子の歌うヘッドライトでもないです。永六輔の誰かとどこかででもないですし、
小沢昭一の小沢昭一的こころでもないです。上柳昌彦のポップン王国でもなく、
中島みゆきのオールナイトニッポンでもユーミンでもないです。
さんまのブンブン大放送でもなかったですし、杏子のスーパーギャングでもないです。
何か昔はやたら喘ぎ声がするラジオ番組多かったですよね。毎週正座して聴いてましたけど。


ついでに思い出しましたけど、J-waveが開局する時に嬉しいのと珍しいので、
チューニングして放送が始まるのをずっと待ってた思い出があります。
朝の4時だか5時だかだったと思いますが、
始まったら1時間くらい壮大な環境音楽っぽいのが流れてた気がします。


そう、なんでも良いのですが何とはなしに土手に寝転んでラジオを聴いていると、
ちょうど谷山ぴろこさんがゲストでおしゃべりしていました。
将棋の谷川名人みたいな人が好みだとかそんな話だったと思いますが、
アルバムをリリースしたばかりでニューアルバムからの曲が流れました。
それが「ただ風のために」という曲でした。
ゆったりとしたピアノのイントロで始まる曲です。


 わたしが動くのは ただ風を起こすために

うん?
今まで聴いたことがなかったような歌い出しでつい引き込まれてしまいましたが、
とにかく不思議な魅力を持つ歌だなと耳をそば立てて聴いていました。


そしてサビの部分の、


 言葉や約束には なんの力もない
 本当に優しいものは ただ 額の汗と吐息


このフレーズを聴いた瞬間何故だか分かりませんが、
昼間っからうっかり涙が出ました。
それまでも音楽は好きでよく聴いていましたが、
曲を聴いて泣いたという経験は生まれて初めてでした。


今も思いますが世の中いかに無駄な言葉や約束や情報の多いことか。
たった二行でこの虚栄に満ちた世界を切り放す素晴らしい詩。

一体この人は何者なのだろう。
それから気になってこの曲が収録されたアルバムを購入しましたが、
「お昼寝宮・お散歩宮」というこれまた不思議なタイトルで、
谷山さんが書かれた同名の小説のイメージアルバムでもあるのですが、
夢の中でさらにまた夢を見て、人探しをするというお話で、
ここでまた新たな別の戦慄、衝撃を受けることになりますが、それはまた別のお話。



谷山さんの曲ってよく白と黒に分けられたり、
実際に白盤、黒盤とベスト盤が出ていますが、
簡単に言うとファンタジーダークファンタジー。
かわいいメルヘン普通の歌謡曲っぽいのが白、
怪奇ミステリーホラー異世界などの作品が黒という感じで、
リスナーの方の中で分けられています。
ですが個人的にはその中間の無色透明な作品群があるのかなと思っています。


1番人気のある「海の時間」もおそらくそうですし、
この「ただ風のために」という曲もそうなのかなと。
何か自我を超越した無我の境地が垣間見えるというか、そんな作品です。
今もなお、一体この人は何者なんだとよく思います。
声の可愛い普通のポッチャっとしたおばちゃんなんですけど。


この方を見るとつい背中に羽を探してしまいますし、
お尻に矢尻のついた尻尾があるんじゃないかと探してしまいます。


そんな谷山さんですが、
この曲と出会った日は今でもよく覚えています。
お日様が気持ち良い、とても天気の良い日でした。


谷山浩子 ただ風のために
https://www.youtube.com/watch?v=jncXb8Iu1fc&t=4341s



風の話 立原道造
 
そんなことを言ふのはをかしかつた
僕らは まじめな顏で言ひあつてゐた
風が見えないことを
 
最初の子供は 風が埃のそばにばかり見えることを言つた
誰にもその考へは氣にいらなかつた
 
次の子供は 風が枝のそばにばかり見えることを言つた
その子は木のぼりを考へた 葉がそよいだ
 
僕らはみんなで言ひあつた
そしてたうとう最後の子供が言つた
あれは見えなくてよいことを




ここからライブレポ。



今回の放課後の音楽室はジャズピアニストの佐山こうた先生と。
なんとお父様も有名なジャズピアニストの佐山雅弘さん。
もうお亡くなりになられましたが、6年前に同じステージで谷山さんと共演されています。
そして息子さんが同じステージへ。感動的ですね。
そして今回は全て佐山さんの選曲だそうです。


1番の感想はやっぱりピアノすごいなです。
谷山さんの曲は元々ピアノ弾き語りの曲が多いですが、
若い才能あるピアニストのキレのある伴奏とアレンジは、
さらに魅力的で良いなと思いました。ホールの音も本当に良いです。
どんなに音数が多くても音の粒が揃っていて、
きれいに響いていました。

中でも特筆すべきは「夢のスープ」での演奏ではないでしょうか。
得体の知れない歌詞を楽しそうに歌うのが不気味な曲であまり得意な曲ではなかったですが、
不穏な曲に鋭利な不協和音が効果的でゾクゾクしました。
ただ途中でスーパーマリオの地下ステージみたいだなと思いましたが、
谷山さんも笑ってらしたので同じように聴こえたのかも知れません。


谷山さんは相変わらず楽しそうにお喋りされてました。
そして昨年はマニアック。今年は自分が得しかしないセットリストでした。


2024.6.8 東京文化会館小ホール



1曲目「お人形畑」
2曲目「鯨のため息」
3曲目「冷たい水の中をきみと歩いていく」


佐山こうた先生ソロ


4曲目 天にはさかえ(F.Mendelssohn)
5曲目 April Shower(Kota Sayama)
6曲目 in the Velvet(Masahiro Sayama)
7曲目 Armaondo’s Rhumba(Chick Corea)
8曲目 Baiao Barroco(Juarez Moreira)


休憩


9曲目「夢のスープ」
10曲目「放課後」
11曲目「窓」
12曲目「かごしまショコラほいくえんのうた」
13曲目「千葉県立八日市場特別支援学校校歌」
14曲目「恋するニワトリ」
15曲目「ねこの森には帰れない」
16曲目「さよならのかわりに」


お礼の曲
「こんな素敵な夜なのに」
「ただ風のために」


思い出を語っていたら、
なんとアンコールの最後に…本当にびっくりしました。
涙は出ませんでしたけど何十年か越しに泣きました。


佐山先生ナイスな選曲をありがとう!






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